ゴロスカ

狂人に相応しい終わりを迎えるまでの記録

死ぬまで死ぬなよ

あなたの眉をしかめる顔つきが常態化したのはうつ病になってからか。俺の記憶では。前はもっと普通に笑顔が見られた。その後笑顔がみるみる消えていき、晩年は笑顔の作り方を自撮りで試みていたが笑顔になっていなかった。

『おめーも死ぬまで死ぬなよ。』

あなたが心酔していた漫画HUNTERxHUNTERのウェルフィンのセリフ。

それを理解していると思ってた。例え蟲に喰われ半獣化しても死ぬまで死なない。それを心に留めていると思ってた。俺はあなたからHUNTERxHUNTERの面白さを教えてもらった。あなたが唯一認めてくれた俺の漫画に対する思い。もっと色々読んでもらいたいものがあった。特に『がっこうぐらし!』は何でもっと早く薦めなかったのだろうと。あれを読んで少しでも自分を肯定する気持ちになってもらいたかった。

でも結局結果は同じだろう。

逃げること。生命の危機を感じたら逃げていいんだということ。逃げることは悪いことではないのだということ。性格的にそのことに自ら辿りつくのは難しかったかもしれない。本人の性格上それを気づかせるよう導いたり、戒めたりするのが精神科医の仕事だった筈だ。原田は昔言っていた。お母さんから離れなさいと。母娘共依存になっていることをあの頃は見抜いていたのだ。なのにいつからか原田は相互疑似恋愛状態に陥り、離れた後のその先=誰に何と言われようと自分の人生を生きる。生命の危機を感じたら誰に何と非難されようと逃げる。自分の生命を守るために逃げることは悪いことでも何でもない。

それらを一切導かず、ただ妹に感情移入して天使だなんだのと妹をますます追い詰める甘言を繰り返し、薬を大量に処方し、家族の中の悪いやつ探しを一緒に始め、父をサイコパス呼ばわりまでした。それは精神科医の立場として踏み込んではいけない領域だ。

飯田橋の原田誠一。あんたは精神科医としてやってはいけない大きな過ちを犯した。

妹は真面目で責任感が強く、自分の身を犠牲にしてでも家族の為に頑張ってしまう人だった。典型的なうつ病になりやすい気質だ。そこから解き放たなければいけなかった。医者としてすっかり堕落したあんたには何らかの形でけじめをとってもらう。

俺はあなたの自死を逃げたとは思ってない。俺は認めない。生き地獄の中で本人の中で完全な生きる限界を見て、そして前から準備していたかどうかはわからないが、衝動に突き動かされたのだろう。

もう後悔しても時間は戻らない。あなたも戻ってこない。HUNTERxHUNTERでいう念獣をずっと背負ったまま死ぬまで死ねない。

もしタイムリープが出来たとしても、どこにも戻りたくない。どこに戻ってもまた別の形で同じような結果になると思うから。

芸術はあなたを救わなかった。俺はかなり前から芸術と呼ばれるもの全般に嫌悪感を抱くようになっていた。漫画やアニメやゲームを気安く芸術ゲージュツ呼ばわりする輩はそのお気楽人生死んでくれ。

天才なんていない。天才なんて99.999999%の人間が見つけられない。気安い存在ではない。芸術なんてない。芸術なんて99.999999%の人間が見つけられない。気安いものではない。創作や表現がしたいのならば、評価を一切気にせず、ただ黙々と楽しんで作り、気軽にがんがんアウトプットする。それと仕事や社会に関わることを結びつけるべきではない。ありもしない芸術なんていう自意識に溺れもがき苦しんでいるのは他人だからよく見えるのだ。家族も芸術自意識も全部忘れて、もっと自分だけの人生を生きてほしかった。そこに踏み出さなければあなただけの人生は一生訪れない。残念ながら俺みたいな屑の言葉は彼女には届かなかった。

あなたは自分に厳しく他人にも厳しい人だった。だから責められる側、非難される側に救いや逃げ場がなかった。

俺は思う。人間一番やってはいけない生き方は自分に厳しく他人にも厳しい生き方だ。この生き方は本人も含めて全員を不幸にする。本人も他人も逃げ場が残されないからだ。

俺はこの先重い念獣を背負いながら、自分に甘く他人にはテキトーで、本当の破滅が訪れるまでは死ぬまで死なない。諦めないではない。全てを諦めてる。そのうえで本当の破滅、誰もいなくなったら、みんなの顔を思い浮かべながらあとは自分で土に還るよ。